February.gif

The Sheltering Roof(保護する屋根)

全ての生命あるものに、親切で慈悲の心を持つ者は、私にとって親愛なるものである。(※1)
(※1訳注:バガヴァッド・ギータの一節。“私”とはクリシュナでありギータでは最高神である。)

 それほど昔のことではないのですが、冬の季節の間、樹齢が何千年にもなる木々があるような古い森は、その上層の枝と葉が覆いとなって地表を降雪から守っていたのです。もちろん、朝になって日が差し、そしてやがて春になったあかつきには、それまで木々の上層の枝につもっていた雪は溶け、地表は穏やかな形で水分を受け取ることでしょう。

 森をすみかとしている動物達にとって、これほどありがたいことがあったでしょうか。ひとつには、彼らは今よりもずっと体を濡らさずに乾いた状態でいられたのです。うさぎやねずみ、リスのような冬眠しない小動物達が、朝に起き出してから、自分や家族のために食料を探しに出かけることは難しくなかったのです。それが今では、深い雪のために十分な食べ物を見つけることが難しいのです。アメリカ合衆国では、97%以上の古い森が伐採されてしまいました。しかもいまだに毎日伐採され続けています。この国では、おそらくここ数年のうちに、かつて豊かにあった古い森はなくなってしまうことでしょう。ブラジルにあり、伐採による被害が広がっているとされる熱帯雨林であるアマゾンですら、75%のジャングルと呼ばれる古い森が残っています。アメリカ合衆国ではわずか3%が残っているにすぎません。

 ここニューヨーク州のウッドストックでは、窓の外を眺めやると、山々があります。そのキャットスキル山脈には、皮なめし職人、木こりや農家により、50年から100年、あるいはもっと前に古い木々は残っていません。冬の山中は、2、3日ひげを剃っていない男性のようです。一本一本の毛は美しいのですが。森の中の地面はとても荒涼として見えるでしょう。なぜなら木々があまりに細く、互いを覆うことができないほどまばらだからです。それでも、私はカナダツガ、マツ、オークの木があることがありがたいと思っています。これらの木々の間を縫って歩くことはとても素晴らしいのです。でも、それらの木々はとても若く、そのため雪や雨で森の地面は覆われてしまいます。そして風が強く吹くと、木々の間を強く吹き抜け、時にはいくつかの木を打ち倒してしまいます。もし木々がもっと密集して育っていれば、風にも無事でいられるでしょう。

 何年か前にニューヨークからここへ引っ越してきた時、私は馬たちが、外の寒さ、雨、風そして雪のなかに立っているのを見ました。納屋や木の下ではなく。私はとまどいましたし、馬が可哀想に思いました。地元の人達は私にこう言いました。“動物なんだから、あたりまえにそうしているんだよ。鹿を見てごらん。”私が野生の鹿を見て、判ったのは、彼らは少なくとも森に入っていって、雨風をしのぐ覆いを得ることができるということでした。でも、今では私は、森はかつてのように動物達にとっての覆いとなっていないのだと悟りました。実際は、鹿は冬の厳しさに苦しみ、人が善意で与えるものを感謝して食べているというのが本当のところです。私はこの地域固有の動物達(※訳注:原文でシャロンは動物のことを現すのにpeople(人)という言葉を用いています。それは動物と人間が対等であることを示すために、ジヴァムクティ・ヨーガで頻繁に使う表現です。)になにかをすべきだと思わせました。私たちは動物達の住処を毎年どんどん奪い続けています。

 私たちは、私たちの土地にやってくる鹿達のために、地面に落ちた木の枝で家を造りました。それはかやぶき屋根のあずまやのようなものです。鹿達は冬と夏に良くそこに現れます。私たちは窓の外で、彼らがあずまやの下で眠っているのを見ることができます。春には、雌鹿がそんな人の手で作られた、屋根の下が赤ちゃんを生むのに安全だと感じているのです。

 言うまでもなく、鹿達はハンターからも安全になったわけではありません。森の木々があまりにまばらなので、ハンター達が鹿の居場所を突き止めるのは簡単です。私は昔からそうだったとは思いません。私たち人間は、動物達からかつては青々と茂っていた森の住処を奪い、彼らに限界ぎりぎりの生き残り生活を強いているのです。動物達の中にはそれができないものもいました。北米大陸の太平洋岸北部では、Spotted owl(西アメリカフクロウ)と鮭は絶滅の危機にあります。彼らは生きるために古くて密生した森が必要なのです。若い森では生き残ることができません。

 私に判ったのは、あまり田舎で過ごしたことのない多くの人には、ここには沢山の木々があるように見えるということです。でも、もし木々がかつてそこにあったように、あるいはせめて一部でも残っていたら、森がどんな様子になり得たかと比べてみてください。私は田舎に住んでいるでしょと言われますが、森がどんなであり得たかのか知っているので、窓の外のキャットスキルの森を眺めても、物足りなく見えるのです。

 多くの人間は都市に住んでいます。多くの野生動物、リス、きつね、鳩やほかの鳥も野良猫と同様に都市に住み、せかせかとした人間達のただ中で住処と食べ物を見つけようと一生懸命です。私たちが彼らのことを無視して、野生動物なんだから、生き残るすべを探すのは当然と思いがちです。でも、特に冬の季節に、それら私たちの仲間達にとって生き抜くのは本当に大変で、私たち人間が善意で与えるものをありがたく食べるしかないのです。私たちが手助けする手軽な方法はたくさんあります。例えば、外出するときには、仕事に行く途中で出会う鳥やリスたちのために、いつもポケットに木の実や種を入れておいて下さい。あるいは野良猫達を世話してあげて下さい。彼らを捕まえて、診療所に連れて行って治療を受けさせる、あるいは同時に去勢手術を受けさせてから、放してあげるのです。そして世話をするのには、栄養のある食べ物だけでなく、藁で覆った箱状のすみかを与えてあげて下さい。私たちが思いやりの気持ちを他の人達へと広げ、他の動物達へと広げるとき、私たちの行いがいつかは、でも必ず自分に返ってくるように、私たち自身の幸福を間違いないものにするでしょう。

-Sharon Gannon
日本語訳 AKKIE